ジャーナリズムの世界で最も権威があるとされるアメリカの「ピューリッツァー賞」(ピューリツァー賞、Pulitzer Prize)。その中でも、最高峰とされる報道部門の「公益賞」(Public Service)の歴代受賞作の一覧です。2022年までの全記録です。毎年4月ごろ発表されます。この賞は、優れた報道やスクープに贈られます新聞や通信社などが対象となります。コロンビア大学ジャーナリズム大学院が、事務局をしています。
年 | 受賞者 | 報道内容 |
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2022 | ワシントン・ポスト | アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件 |
2021 | ニューヨーク・タイムズ | 新型コロナウイルスの感染拡大で顕在化した人種差別や経済格差、アメリカ政府の失策などを報じた。 |
2020 | アンカレッジ・デイリー・ニューズ(アラスカ州の新聞)
※非営利の報道機関「プロパブリカ」が報道に貢献 |
アラスカ州の田舎の3分の1に、 警察がいない状態になっている。 このため、 性犯罪が横行している。 アラスカ州の性暴力事件の発生率は全米平均の3倍。 さらに、警察がいない地域では州平均のさらに2倍だという。 こうした実態を告発する連載を、1年以上にわたって展開した。 報道の影響により、地元の州政府や議会が措置を講じることとなった。 |
年 | 受賞者 | 報道内容 |
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2019 | 南フロリダ・サン・センティネル | 米フロリダ州パークランドの高校で、2018年2月に起きた元生徒による銃乱射事件。 生徒ら17人が死亡した。 事件の前後における学校や行政の不手際を暴いた。 |
2018 | ニューヨーク・タイムズ、 雑誌ニューヨーカー(ローナン・ファロー氏) |
アメリカ映画界のセクハラ事件の報道。
ハリウッドの有力者ハーヴェイ・ワインスタインが長年にわたり女優らに性的関係を強要していたことをスクープした。
ハラスメントを告発する社会運動「#MeTooムーブメント」の発端ともなった。 雑誌ニューヨーカーの報道を担当したローナン・ファロー氏(Ronan Farrow)はフリー・ジャーナリスト。調査報道を得意としている。映画監督ウッディ・アレンの息子。30歳。 オバマ政権下で外交などの政策アドバイザーを務めた。 当初、本事件を契約先のテレビ局NBCで報道しようとしたが、却下されたため、雑誌ニューヨーカーに持ち込んだ。 一方、ニューヨーク・タイムズ紙は2人女性記者が担当。ワインスタイン事件に加えて、保守系ケーブルテレビ「FOXニュース」の人気司会者ビル・オライリーのセクハラ事件をスクープし、 番組降板へと追い込んだ。 ローナン・ファロー氏の著書(英語)→ |
2017 | ニューヨーク・デイリー・ニューズ、プロパブリカ | 少数民族を追い払うために追放規則を濫用するアメリカ警察 |
2016 | AP通信 | インドネシアやタイなど東南アジアの水産会社による強制労働など、水産業界の過酷な労働実態を告発。 |
2015 | ポスト・アンド・クーリエ(米サウスカロライナ州チャールストン) | ドメスティックバイオレンス(DV)についての報道。家庭内暴力に甘いサウスカロライナ州法など事件の背景にある法的、文化的、経済的な要因を探った。 |
2014 | ワシントン・ポスト、ガーディアンUS | エドワード・スノーデン暴露事件 |
2013 | サン・センチネル(米フロリダ州フォートローダーデール) | 警官の職務外での危険な自動車運転についての調査報道 |
2012 | フィラデルフィア・インクワイアラー | 学校内の暴力やいじめについての報道。ビデオ映像を交えて実態を明らかにした。 |
2011 | ロサンゼルス・タイムズ | カリフォルニア州ロサンゼルス郡ベル市の職員(公務員)の過剰な給与支払事件。幹部職員の逮捕につながった。 |
2010 | ブリストル・ヘラルド・クーリエ(米バージニア州ブリストル) | ダニエル・ビルバート記者の報道。バージニア州の天然ガスの地主へのロイヤルティ支払をめぐる不祥事 |
年 | 受賞者 | 報道内容 |
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2009 | ラスベガス・サン(担当:アレクサンドラ・バーゾン記者) | ラスベガスのカジノ街での建設作業員の高い死亡率についての報道。緩すぎる規制の改革につながった。 |
2008 | ワシントン・ポスト | 米バージニア州のウォルター・リード病院で、負傷した退役軍人が粗末に扱われていた事件をスクープ。連邦政府による改革のきっかけとなった。担当:ダナ・プリースト記者、アン・ハル記者、Michel du Cille(カメラマン) |
2007 | ウォール・ストリート・ジャーナル | ストック・オプションの権利の付与日を操作する米国企業幹部の「バックデート操作」をめぐるスクープ。多数の関係者を辞任に追い込んだ。 |
2006 | タイムズ・ピカユーン(米ルイジアナ州ニューオーリンズ) | ハリケーン「カトリーナ」をめぐる一連の報道。新聞の印刷工場から避難した後も、残された資材を使って新聞の発行と報道を続けた。 |
2006 | サン・ヘラルド(米ミシシッピ州ビロクシ) | ハリケーン「カトリーナ」の発生後、被災地の人たちのために紙とネット上で報道を続けた。 |
2005 | ロサンゼルス・タイムズ | 徹底した取材により公立病院における医療問題や人種差別を明らかにした。 |
2004 | ニューヨーク・タイムズ(担当:デイビット・バーストウ、ローウェル・バーグマン記者) | アメリカの労働者の労働災害と、安全基準や法律を守らない雇用主の実態 |
2003 | ボストン・グローブ | 聖職者による性的虐待の実態。被害者への口止め工作や脅しなど。カトリック教会の世界規模での改革を喚起した。 |
2002 | ニューヨーク・タイムズ | 911同時テロの後、アメリカを襲った悲劇について幅広い取材と報道を続けた。被害者についても詳細に報じた。 |
2001 | オレゴニアン(米オレゴン州ポートランド) | 米国移民帰化局(INS)の構造的な問題を検証。撤退した取材と検証によって、外国人に対する粗末な扱いや虐待などを明らかにし、改革を促した。 |
2000 | ワシントン・ポスト(担当:キャサリン・ブー記者) | ワシントンの知的障害者グループホームでの入所者虐待やずさんな業務について報道。市の当局者を是正措置へと促した。 |
年 | 受賞者 | 報道内容 |
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1999 | ワシントン・ポスト | ワシントンの警察による危険な拳銃の扱いについての連載。十分な訓練や監督を受けていない警官が、銃を使用していた。 |
1998 | グランドフォークス・ヘラルド(米ミネソタ州イーストグランドフォークス) | イーストグランドフォークス市のその周辺を襲った大洪水をめぐる報道。有益な情報提供と写真。大洪水、竜巻、そして、火災のさなかに、コミュニティーを団結させるのに貢献した。新聞社の印刷所も被害を受けるなか、報道を続けた。 |
1997 | タイムズ-ピカユーン(米ルイジアナ州ニューオーリンズ) | 世界的な魚不足、漁業危機に関する連載報道 |
1996 | ニュース・アンド・オブザーバー(米ノースカロライナ州ローリー) | ノースカロライナ州で急増していた養豚業者の廃棄物処理による環境や健康リスクに関する報道 (メラニー・シル記者、パット・スティス記者、ジョビー・ワーリック記者) |
1995 | 英領バージン諸島新聞(ヴァージン諸島セント・トーマス島) | 英領バージン諸島の犯罪率の高さと、刑事裁判制度の関連についての報道。政治面での改革を促した。メルビン・クラクストン記者などの報道 |
1994 | アクロン・ビーコン・ジャーナル(米オハイオ州アクロン) | 地域社会の人種問題の検証記事 |
1993 | マイアミ・ヘラルド | ハリケーン「アンドリュー」に関する報道。読者に有益な情報を提供するととみに、被害を悪化させたずさんな予報や警報、建築基準などについて検証した。 |
1992 | サクラメント・ビー(米カリフォルニア州) | For "The Sierra in Peril," reporting by Tom Knudson that examined environmental threats and damage to the Sierra Nevada mountain range in California. |
1991 | デモイン・レジスター(米アイオワ州) | For reporting by Jane Schorer that, with the victim's consent, named a woman who had been raped --which prompt widespread reconsideration of the traditional media practice of concealing the identity of rape victims. |
1990 | ワシントン・デイリー・ニューズ(米ノースカロライナ州) | For revealing that the city's water supply was contaminated with carcinogens, a problem that the local government had neither disclosed nor corrected over a period of eight years. |
1990 | フィラデルフィア・インクワイアラー | For reporting by Gilbert M. Gaul that disclosed how the American blood industry operates with little government regulation or supervision. |
年 | 受賞者 | 報道内容 |
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1989 | アンカレッジ・デイリーニューズ(米アラスカ州アンカレッジ) | For reporting about the high incidence of alcoholism and suicide among native Alaskans in a series that focused attention on their despair and resulted in various reforms. |
1988 | シャーロット・オブザーバー(米ノースカロライナ州) | For revealing misuse of funds by the PTL television ministry through persistent coverage conducted in the face of a massive campaign by PTL to discredit the newspaper. |
1987 | ピッツバーグ・プレス | For reporting by Andrew Schneider and Matthew Brelis, which revealed the inadequacy of the FAA's medical screening of airline pilots and led to significant reforms. |
1986 | デンバー・ポスト(米コロラド州デンバー) | For its in-depth study of "missing children," which revealed that most are involved in custody disputes or are runaways, and which helped mitigate national fears stirred by exaggerated statistics. |
1985 | フォートワース・スター・テレグラム(米テキサス州フォートワース) | For reporting by Mark J. Thompson which revealed that nearly 250 U.S. servicemen had lost their lives as a result of a design problem in helicopters built by Bell Helicopter -a revelation which ultimately led the Army to ground almost 600 Huey helicopters pending their modification. |
1984 | ロサンゼルス・タイムズ | For an in-depth examination of southern California's growing Latino community by a team of editors and reporters. |
1983 | ジャクソン・クラリオン・レジャー(米ミシシッピ州) | チアーズ |
1982 | デトロイト・ニュース | For a series by Sydney P. Freedberg and David Ashenfelter which exposed the U.S. Navy's cover-up of circumstances surrounding the deaths of seamen aboard ship and which led to significant reforms in naval procedures. |
1981 | シャーロット・オブザーバー(米ノースカロライナ州) | For its series on "Brown Lung: A Case of Deadly Neglect." |
1980 | ガネット・ニューズ・サービス(米バージニア州マクリーン) | For its series on financial contributions to the Pauline Fathers. |